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@携帯電話

おはよう、今日も朝が来てしまったなぁ。
 
毎日ひとつづつ、感覚器官を決めて、意識的に研ぎ澄まして過ごすことにしてるんだ。
昨日は耳…。鼓膜に意識を集中して、醒ます。特に"倍音"に気をつけて人の声を聞いてみたんだ。
 
電車の中、豊かな音のまとまりを含む二人の女性の話し声。スーパーマーケット、乾いた声のレジのひと。ラジオ、くぐもり穏やかな中に引っ掻くような音。
どよどよと小さく揺れて鳴る街の声の中に、ぶよりとした人の声の塊があり、そこに触れたり離れたりするような感じとか。
 
とてもおもしろい。
 
ところで、今聴いている音と前聴いたことのある音を比べるのって、どうすればできるんだろう。
"あれぇ今日声がちょっと変じゃない?"って気づくときは、何を聞きとって何と比較しているんだろうね。
 
あの日聞いたあなたの声は、擽るようなざらついた掠れの中に、単一音ではない・粘つく・真ん中くらいの三本くらいの音があって、それは伸びたり縮んだりしていて、変わったものだった。あなたの喉歌を聞いていると、わたしは "もっと聴きたい" という気分になった。私は眼を閉じて "うん、うん、" と、ただ頷いてさらなる歌を促し、それを聞きながら、耳からつながる皮膚や汗腺、瞼の裏、その他の感覚器官にも集中を深めていって、それらが合わさった感覚と、さらには自らの頭蓋骨によって "ブヮン(うん)" と響く自分の声とがさらに混じりあい、ふと、身体の芯のほうに冴え冴えとした軸ができたように感じた事を思い出したりしたんだよ。