駐車場から校舎へ向かうとき、携帯電話が鳴った。
バイブレーションの音がブーッブーッと焦らせる。
鞄をごそごそすると底のほうに携帯電話を見つけた。
手が触れると、震えていない。あれ?おかしいな。
注意して耳をすますと、左手にある草むらと竹林から音が聞こえることに気づいた。
ブーッブーッと鳴き続けている何かが居る。
鳥かな、と思った。じゃあ"ケイタイ鳥"だ。と命名した。
あれ、でもそれってねじまき鳥みたい、ハルキストみたい。ふふ。
そんなテキトウなことを考えて、坂道を上り、校舎へ。
授業が終わった後、駐車場へ向かう時、ブーッブーッという鳴き声が5つくらい重なって聞こえてきた。一体何が居るんだろう。
草むらを見つめても、何も見えてこない。草むらに何か居る。謎めいた気分に胸がはねる。
耳を澄ます、もっと奥にいるはずだ。
ふと気づく、これは鳥じゃない。わかった、蛙だ、この低い声、ブーッブーッという音が、モウモウという擬音語に変わる。あぁ、ウシガエルだ。地面に足がついた気がした。そうかそうか、ウシガエルか。
ニコニコしながら坂をくだる。
すると、向こうから、犬と散歩するおばちゃんが来た。よく聞こえないけど、犬に話しかけてるみたいだ。
「ほらー鳴いてるねぇー、食用蛙、たくさん。」
それを聞いた瞬間、は。食用蛙、そうとも言う。
パチンと音がして、おなかの底からはじける笑いがこみ上げてきた。
私に、バカみたいで力強い魔法がかかった。