◆NEWS :装幀してます 最近のお仕事は→仕事の記録 : Twitterから
◆NEWS:2007年3月、フリーランスのデザイナー兼ライターとして個人事務所を立ち上げました。

ビジュアログtumblr:http://okazawarina.tumblr.com/
つぶやきtwitter:http://twitter.com/rokaz
つぶやきログtwilog:http://twilog.org/rokaz

おいしいレシピ :冗長版

最近職替えを計画しているので、私のお財布の紐が固めになってきました。
これまでは「入ればそのまま使う」という浪費家気質で、その日その日をお気楽に暮らしていましたが、そうも言っていられないフリー稼業になるのです。そんな中、まず見直しの対称になるのは、『食費』です。
しかし、美味しいものに目がない私は、食に関しては“すぱっ”と大金を出してしまいます。
””美味しいものはいっぱい食べたいし、無理に切り詰めて、ひもじい思いもしたくない。だけど、お金はかけられなーい!””
どうしたらこの浪費癖を乗り越え、無駄な食費を切り詰められるのか。これは結構シビアな問題であります。
 
食費削減計画の第一は、まずコンビニエンスストアで「なんとなく食べ物を買ってしまう」のを止める、ということでしょう。そして次に、外食を控え、家で自炊するということ。
都市での一人暮らしというのは、総じて外食に頼りがちになるものですが、ここは一発奮起、できるだけ毎日自炊をするというのが最大にして最善の方法でしょう。
しかし、仕事で疲れて夜遅くに家に帰って来て、またさらに台所に立ち調理をするというのは、なかなかどうして、できないものなのです。この重い腰、どうすれば持ち上げられるのでしょうか。
 
 
私なりに考えた解決方法、、、それは、「まず数冊のレシピ本に投資する」というものです。
コンビニエンスストアでの無駄遣いを止めて浮いたお金を、自分の気に入ったレシピ本に投入するのです。コンビニで買ったお菓子や飲み物は食べたら消えてなくなってしまいますが、レシピ本は一度手に入れてしまえば、ずっと残るものです。
 
レシピ本の選び方のポイントとしては、まず、量のたくさん載った、節約料理や基礎知識のレシピ「ではなく」、なるべくきちんとした食材や旬のものを扱って手間をかけて調理するものを選ぶ事。また、電子レンジだけで出来る!や電子ジャーでできちゃう!などという簡単もしくは省エネ調理法をうたったもの「ではなく」、焼いたり煮炊きしたりして手間をかけているものを選ぶ事です。
 
 
ー 何故重い腰を上げるのに、わざわざお金や手間のかかるような調理法の載ったレシピを買うのか?
それには、れっきとした理由があるのです。
料理というのは、レシピに書いてある材料と同じものを揃えて、その手順通りに手を加えていけば、写真通り美味しそうにできる、というだけのものではありません。「冷蔵庫に入っていた食材で、ちゃちゃっと適当に作っちゃった」という料理でも、調理する人によっては、抜群においしい料理ができるものです。
その「ちゃちゃっとおいしく作れる人」になることができれば、自炊の面倒な気分は随分晴れますよね。
しかし、それには"料理の想像力"が必要だということに思い至ったのです。
 
"料理の想像力"とは、食材と食材、食材と調理法を組み合わせるセンスに宿ります。
小説家に例えて言うなら、どんな登場人物をどんなシチュエーションで出会わせるのか、そしてそのストーリーはどんなジャンルなのかを洗濯するセンスによって、その物語が面白くなるかつまらなくなるかが決まるということに似ています。
 
レシピ本を眺めていると、まずは、焼く 煮る などの基本の「料理の文法」が見えてきます。
基本の文法以外にも、擂りおろしたり漬けたりと、様々な調理法があることを知る事が出来ます。
そうしているうちに、この季節にはこの食材が美味しいなどという「料理の単語」や、これとこの食材はよく組み合わせて使われるという「料理の連語」、そして、この食材にはこの調味料が合う、という「料理の接続詞」なども見えてきます。これら「料理の文法セット」が分かってきたら、もうこっちのもの!と言っても過言ではありません。
 
物語には長編小説や短編エッセイ風など、様々な長さやテイストのものがあります。
短い文章でも、上下巻にわかれた長編小説より印象的な話はありますし、長い間時間をかけて積み重ねられた世界観に圧倒される話もあるでしょう。
しかし、どんなセンスであっても、どんな長さであっても、面白い物語を書くための基本的な約束やノウハウはあります。それは、もともと小説家の身に付いているものではなく、いろんな本を読んだ経験から見つけていくものです。
 
料理も同じく、どれだけ手間のかかった凝った調理法でも、ちゃっちゃと作られたものでも、基本的な約束やノウハウをおさえていないと、本当に美味しい料理は出来ないのです。
今いる登場人物で、いかに面白い話をかくことができるのか。それは、レシピという手順通りのものではなく、食材と食材、食材と調理法を組み合わせる経験とセンスをいかに磨くかということなのです。
 
節約料理のレシピというのは、すでにそのレシピを作った人の想像力と経験が、大胆にプロセスや登場人物をカットして、美味しい短編小説に仕上げてしまっているのです。それを見ているだけでは、「冷蔵庫の余り物でちゃっちゃ」と調理できる人にはなれません。カット出来る人になるためには、何をカットすれば良いのかを知らなければならないからです。しかし、一度こつがわかってしまえば、あとは自分の買える値段の食材を旬に合わせて買ってきて、冷蔵庫にぽいっと入れてしまうだけで良いのです。
  
そう、私たちはいきなり星新一にはなれないのです。まずはドストエフスキィを眺める(読まなくてもいい)ところからはじめてみましょうよ。
そしていずれ、自分だけのおいしい簡単レシピができるのです。
それはとっても楽しい事ではありませんか。