驢馬のあるじはついぞ狂ってしまわれたのか、腰に差していたブーメランを振り回して騒いでおられた。
驢馬は荒野にぽつねん取り残され、静かな声で一度鳴きました。
もちろん、驢馬に思いをかけるひとなど、世界のどこにも居ませんでした。
かみさま? いません。
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いいえ、私は驢馬に祈ります。あなたのいのちを生きよ、と。
驢馬であることを超えてあなたはあなたの生を認めなければならない。
容易に出来ないことはわかっているが、そうであって欲しいと、あなたがそれを成し遂げられるよう祈ります。
世界へその魂を投げ出し尽くしてきたものたちに、わたしは呼応し寄り添わざるを得ない。もう聞いてしまった、見てしまった。
偽物くさいの鳴り物にかき消され埋れて行った沢山の声、
垂れ流される浅はかな言葉で汚されていった空の織物。
少しでもいからこれらをすくいあげたいと思うのは思い上がりか?
あなたがたの命やすかれと祈りを捧げてしまう、これが信仰でなくてなんだと言うのか。
(そしてそれに、わたしは含まれているのだろうか?)