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夕方何時間

何時の間にか、湖畔の仕事場に向かっていた。乗り込んだ車内では先日何気なく買った昔の推理小説を読んでいた。寝不足というわけでは無いのだが、どうも頭を擡げて抜けない薄い怠さを振り払う様に首を左右に揺らす。手元を改めて見つめる。文庫の頁半ばを開いている。『棚に隠されたという薬瓶は未だ行方不明だ』 『棚に隠されたという薬瓶は未だ行方不明だ』『棚に隠されたという薬瓶は未だ行方不明だ』同じ行を何度読んでもその文意が掴めない。そこで気付く。ここまでの筋をまったく思い出せない。この本を買った光景は有り有りと覚えている、通勤の暇つぶしにと手にとった事、レジで若い男性店員に カヴァーかけてください と依頼した事とか。しかしいつから読み始めたのか、なぜ仕事場に向かっているのか、そもそも今は何時なのか。少し焦って腕を持ち上げると、ワードローブに無いはずの時計を着けている。違う、違う、全部違う。
その腕に、小さな蜘蛛が飛び乗った。背中の毒々しい模様に一瞬息がつまるが叫んだりはしない、慣れたものだ、人差し指で痛くないだろう程度に弾き飛ばす。お前はどこから来たんだ、とつぶやきながら。
 
慣れたもの?何に慣れている? というか、そもそも私は誰だ。