観察とか文章訓練のために、朝、電車移動するときなどに書いてみてる。ディミヌエンド、について書いてみた。
五月晴の後の唐突な雨の予感は、うすら寒い風で生生しく茂る桜の葉を揺らし、浅くなる日の光が大気を浅葱色に包む。いきぐるしい、指先まで力が入らず、腕をだらりと下げて駅舎に立っていた。何もかもが遠い。いや、歩いて行けば一分も経たないうちにその幹に触れる事ができる。ただ、行かないだけで。
向こうの方から遠近法を伴って滑り込んでくる電車と車輪と線路が響くカタコトの音もまたクレッシェンドしてくる。惰れた頭に不意に響く。車体の大きさと音量が合っていないぞ、よく見てよく聞け、ほら、もう少し大きな音が鳴るべきだろう、なのに何故だ。何故だ。ほらしっかり見ろ、聞け、問え。
耳が詰まったのか。いや、喉か。息が苦しい。物と音が擦りあわない。
一粒、窓を打った。
