読むべき本が必要な時期に飛び込んできて、その兆候を見逃さない、と言う事に関しては、絶大な自信を持っていますが、『さようなら、私の本よ!』の完結における「えもいわれぬ」未消化な感覚を補完するためによみはじめた『治療塔』そしてその続編の『治療塔惑星』はその自信をより強固にするために私のほうへ向かってきたようです。
と、訳文調に書いてみました。
『さようなら』のあまりのアンチ・クライマクス∩枯れっぷりに未消化なものを感じ、ふと、三年前に買ったきり積読していた『治療塔』を手にとると以外に面白く、ががーっと読みきりました。
- 作者: 大江健三郎
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しかし、十年ほどたったある日、宇宙へと飛び立っていった人たちが次々と帰還してきた。若々しく力に満ち、放射能への強い抗体と、薄く輝く身体を連れて、、、。
大江の核に対する過剰なオブセッションが寓話的に昇華された良品です。
ただ、戦争を知らない子どもとしてはそこまで核をモチーフにするってのも(疑問)という印象があります。まぁ、こうして私のような人が疑問を持つだけでも良いのかもしれない。
この小説が発表された当時、私はまだ小学生で大江など読める状態ではないので、どういう反響があったのかはわかりませんが、きっとSFというフレーズに批判が集まったことと思われます。(あまりにもSFとは似ても似つかぬもので、笑ってしまうほどですが!)
ただ、そういうことは度外視してきっと若年層に手にとって欲しかったのだろうと想像します。
というほど、夏休みの読書にはぴったりの1冊です。
中学生→高校生におすすめします。