いまさら、失った物の大きさに途方に暮れ、泣きたい気持ちになったりもする。
移動中の電車から窓の外に見えた雲の蠢きが、昔の記憶を想起させたのだろうか。私は急に感情的になり、うつむいてしまった。
落陽に照らされて、縦に高く生える雲の縁(へり)が金色に染まっていて、光ったままの雷の様にあやうい線をひいている。
空中に裂け目ができたようだった。こぼれてくるその金色が、私を後悔させる。なぜもっと、うまく振る舞えなかったのか、と。
空は金色。金色の直線がのびてきて、私の心に刺さった。それだけのことなのだけれど。