ISBN:4003241134:detail
授業の合間に、カフェのオープンテラスでランチを食べながら、ヘルダーリンを読んでいた。
あいにくと、空は雨が振る前の独特な重圧に満ちていたが、かろうじて堤防の決壊は免れているという容貌。
ヘルダーリンに興味を持ったのは、ツェランの著書にその名を発見したからだった。なるほどツェランが言及するだけのことはあると一読でわかる孤高で失われた"詩人の姿"!あまりの高貴さに、食べる手が止まってしまい、私は深々と読み進めていった。
そして詩句が「祭の日の……」にさしかかったとき、稲妻という単語の登場とともに、こちらの空も稲光り、遅れて轟音がなった。
私はあまりのセレンティビティに失神しそうだった。詩の神様の到来だ!とさえ思った。
力強い、農夫の美しい肢体が大地に確りと立つ姿を思い、私は空を仰いだ。
灰色の空気が、レースのカーテンのようにゆらゆらと蠢いているのが見える。雷鳴の振動が見える、と根拠もなく確信した。
Flash!
もう一度稲光が空を発火させる。
降り出した雨粒に身をさらしたい衝動に駆られる。
私は耳を澄ました。今なら、いろいろなものが見える。私は詩の喜びを知っている。