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いしの力とかみの力 そしてピース。(おとぎばなし)

有史以前から現在まで続く、長く長い『ヒトの歴史』の中の、とある時期、とある場所。
ある時、ヒトはふとした拍子に"神の力"を発見した。(言葉の発生と発達が、"神の力"の発見と深い関係がありそうだが、それは現在、ただの憶測に過ぎないのでこれ以上の記述は止めておく)


神の力、そして恩赦に寄りかかることで、ヒトは苦悩ばかりの身をかろうじて支えて生きてきた。
神こそが全ての現象を統括せしめるものであり、ヒトはその掌で動き回っているに過ぎない。そう思えばこそ、自らの苦悩の小ささに重い至る事ができるのだ。
しかし、ある時ヒトは、自らの"意志の力"が、神が既に決定した「生から死までレールのようにひかれた運命」を乗り越えるための道具になるのではないかと考えた。
ヒトは、自らの"意志"で、神の決定を乗り越えようと、天に手を振り上げて立ち向かっていった。
しかし、"神の力"は強大だった。意志はいつまでたっても、神には勝てなかった。


神に、そしてすでに決定された運命には勝てない、と、絶望に暮れていたヒトの前に、平和を願う愛の心を持つウサギが現れた。
ウサギ曰く、「神と戦おうとするからいつまでたってもダメなのです、ヒトよ。心に"争いの念"を無くし、神と向かい合いなさい。その時には、きっとわたしが役に立つでしょう。私の身を神に掲げなさい、そして神と向かい合うのです、ヒトよ。」
そう言うと、ウサギはひらりと走り出し、自らその身を樹の幹に叩き付け、ぐったりと動かなくなった。
ヒトは、あまりに突然の出来事に「おお、おお、」と、ただただウサギの身を案じて嗚咽するだけであった。


しばらくして、ヒトは、まだ暖かいウサギの身を抱き、天に向かって静かに話しかけた。
「神よ、今、私はあなたに立ち向かう気はない。私は、ただ、このウサギを救ってやってほしいのだ」
しかし、神は何も語りかけては来ない。
「神よ、あなたは本当に居るのか、居るのならば、このウサギをもう一度元気に走り回れる様にしてくれはせぬか」


神は、ヒトの必死の問いかけにも、答える気配を見せなかった。胸に抱いているウサギの身体は次第に冷たくなっていった。ヒトは、祈った。しかし、それは神に対してではなかった。
「私は二度と"争いの念"をおこさない。誓う。これから私は、神には逆わない。しかし、従いもしない。私は、ウサギの魂に祈る。ウサギよ、生きろ、生き直せ。」


その瞬間、胸に抱いたウサギの身から、豆粒大の光るものがものすごい早さで飛び出した。ヒトは驚きおののき、腰を抜かしてその場に座り込んだ。
光の粒は、そのまま上空高くに登ってゆく。あたりは既に暗くなっており、その行方は容易に追う事ができた。
粒がどんどん小さくなっていく、しかし、輝きは増していくのであった。
ヒトは、突飛な出来事に驚きながらも、すでに内心では、あれはウサギの魂だと納得していた。


ウサギの魂は、北の空でぴたり止まって、瞬きだした。その光は、あたりを暖かく照らし出す優しさに満ちていた。
ヒトは、もう一度だけ「おお」と嗚咽し、その後は何も言わずにその場で泣き崩れた。




勝手におとぎ話を作ってみちゃいました。ほぼ何も考えずに書き始めてみたら、いろんなモティーフがまじりあって、だんだん面白い事になったので掲載します。本当はじゃんけんについてのエッセイを書こうとおもっていたのですが、、、。あれあれ。