- 作者: ジュリアン・グラック,永井敦子
- 出版社/メーカー: 書肆心水
- 発売日: 2004/11
- メディア: 単行本
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もはやバーチャルとリアルという重なりあいなどではなく。
ひとつの景観に対して多重のイメージ・もしくは感情を抱くミックスブレッシングな感じ。
今の雨にあのときの雨を見出していること:
そこかしこで雨は降る。しかし雨はその場に属する固有の何かではない。
今ここで振っている雨と、あの時振っていた雨は、まったく違うものである。
それは、水が巡回しているという万物流転のそれという理由もあるし、また、「思い出された雨」というものに付随してくる特有の「価値」があるという理由もある。
そしてまた、今ここの私自身も、ここに属する固有の何かではない。今の私に、思い出された「あの時の私」を重ねて、価値を見出している、微細な揺れの中で息づいている弱い光だ。
そう、雨の降らない日のほうが多いこの場所で、私はいつの雨を思い出すというのだろうか。
「いま」「ここ」を希求してやまない、雨にすがるしかないこの弱い光。